童貞を失った瞬間

童貞を失った瞬間、妖精は嬉しそうな、悲しそうな顔を視界の隅で確かに見せた
行為が過ぎ、ひとしきりの感慨に浸り終えると妖精の姿が見えない事に気づく


銀のスプンのソファー
パキラの植木鉢のふち
小物入れのベッドのなか
角砂糖を置いた小皿の傍にも


どこにもいない


待って、いかないで、妖精ちゃん、おれ やっと童貞切ったんだよ?
女が苦手でどーしようもなかった俺が 君と一緒に頑張ってやっと!
待って、いかないで、おれ なんのお礼もできてない!
いつもみたいに蹴っ飛ばして笑って、おめでとうって言ってよ!


「どうしたのー?」


振り向くと、下着姿の女が照れくさそうにはにかんでいた


僕は泣いた